美しい人の涙

2001年6月6日
私は、あの美しい人の涙に
結果的に負けたことになるのかも?

山手線の中で、彼女を見かけてから
そんな疑問がぐるぐると私の頭を駆け巡る。

その美しい人とは、編集部で一緒だった。
彼女は、ライター志望と偽りながら
モデルになるチャンスを虎視眈々と
狙っていた。計算高いことは、否めないが
手段を選ばないやり方に、文句を言うどころか
私は圧倒されただけだった。

でも、この美しい人は矛盾と悪口の
カタマリだった。

彼女の志望動機は「○○さん(←私も目標と
していた大先輩)のような読者重視の
文章に憧れて、私も彼女のような〜」という
ありがちっちゃーありがちなものだったけど
彼女が言うと、それはそれで画になった。

そして、見習いとして入った彼女は
その先輩を除く私達に「あんなブスでも
雑誌に出たり、文章書けるんだから、私なら
楽勝で入れるってわかってたけど〜」などと
言ってきた。彼女のツワモノぶりに皆
閉口。矛先がいつか自分に向くことを
恐れたほどだ。なのに、彼女はその先輩に
かわいい後輩っぷりをアピールするではないか。
うちらが恐ろしくて、先輩に彼女が
言っていた悪口を伝えないということが
わかってるらしい。確信犯である。

そんなこんなで、月日が流れたある日。
私は、編集部でその美しい人が泣いているのを
見た。そのとき、私は小さなコラムの連載が
決まっていたものの、他のスタッフの子達との
確執や「なんであの子が文章書くわけ?」などと
言われかなり凹んでいたので、私は泣いている
彼女に対して、心配する余裕がなかった。

1時間後、私は社員に呼び出される。「なぜ、
いじめた?あいつが仕事をドタキャンしたから
怒ったら、お前から電話がなかったから
仕事があるなんて知らなかったと言っていた。」

はー?私、何度も電話して確認したんだけど。
でも、ここで弁解しても何にもならない
私は「伝え方が悪かったのかもしれません。
申し訳ありませんでした。」と謝る。

でも、私の中でのモヤモヤは消えないし
なぜ、彼女にそんな言われ方をされないと
いけないのかわからない。私の存在が
むかつくのか?こういう時、私はなぜだか
他のスタッフの子達に彼女の文句とか言えない。
あんな美しい人が泣いたら、誰だって
あっちの味方になると
わきらめていたからかもしれない。

私の担当者だけは、私を信じてくれた。
“嫉妬”だろうって。でも、彼女の
泣きかたは美しかった。泣いている彼女を
見ると、私が悪かったのではと錯覚を
起こすほどだった。ある日、私は誰にも
相談なしに彼女のもとへ行った。

「私、あなたに迷惑かけることしました?
どーして、嘘つくの?」今、思い返すと
冷静でこんなことを言い放った私は
怖かったのかも...(心では泣き入ってたけど)

彼女はあっけらかんと「えー何のこと?」と
言うだけで、取り合ってもくれない。
彼女が泣けば泣くほど、どんどん
私の居場所がなくなっていくことに
彼女は気付いているはずだった。

そのうち、私はひとりで蟻地獄にはまっていく。
精神的なバランスを崩し、しばらく
休みをもらったりもした。それでも、
だめだった。みんなが彼女の味方を
しているように思えて仕方なかった。
弁解も反抗もしない自分が悪いんだけれど...
私は、こういう事態に悲しくなっただけで、
理解を得ようと頑張る気力もなかった。

自分に自信もないし、慰めてくれた人の
 「彼女のような奴がずぶとく生き残る
    世界がマスコミであり
      マスコミが欲しがる人物だ」
というヒトコトで私は、自分にふさわしい
居場所ではないと悟った。

だから、私はそっと、姿を消した。
担当者の方に一言も言わず、去ったことは
今でも悔いが残る。

後で聞いたのだが、彼女は、周りの反応に
敏感過ぎる私には、あの方法で追い詰めるのが
効果的だったと笑っていたそうだ。それを
聞いていた私の担当者が、彼女をクビに
したことも聞いた。

結局、2人して去ってることになる。
でも、彼女は何らかの形でマスコミに
這い上がる気がする。彼女を見かけて、
そんな直感が働いてしまった。たまらなく
悲しくなった。

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